緩和ケアの問題
世界保健機構(WHO)による緩和ケアの定義を示す次の文章で正しい箇所はどこか。
「緩和ケアとは、(A)による問題に直面している(B)に対して、(C)から痛み、身体的問題、心理社会的問題、(D)を同定し適切に評価をおこない、苦痛を予防し緩和することにより、(E)を改善するための取り組みである。」(2020-44)
- a. (A):がんなどの悪性疾患
- b. (B):患者
- c. (C):早期
- d. (D):宗教的な問題
- e. (E):予後
- a. 生命を脅かす病
- b. 患者とその家族
- d. スピリチュアルな問題
- e. QOL
進行期がん患者のがん悪液質の病態に関係する記述として正しいのはどれか、1つ選べ。(2020-47, 2021-47)
- a. 必要カロリーを点滴で十分に補う必要がある
- b. 運動療法はカロリーを消費するため無効である
- c. サイトカインは関与しない
- d. 基礎代謝率は維持、または亢進する
- e. 筋組織より脂肪組織の減少を特徴とする
- a. なるべく経口・腸管接種を行う
- b. 倦怠感を和らげる
- c. 炎症性サイトカインにより惹起される全身性慢性炎症状態
- e. 脂肪組織の減少の有無にかかわらず、筋組織の減少を特徴とする
進行期がん患者の呼吸困難について正しいのはどれか、1つ選べ。(2020-48)
- a. 原発性肺がん患者以外で呼吸困難は起きない
- b. 気温が低い方が症状は軽減できる
- c. 酸素投与は症状緩和に無効である
- d. 酸素飽和度が96%の患者では呼吸困難は起きない
- e. 低酸素血症がある場合は速やかに気管挿管を考慮する
- a. 呼吸困難は主観的な症状で起こりえる
- c. 低酸素血症の場合は有効
- d. 呼吸不全は起きないが呼吸困難は起きる
- e. 酸素吸入をする
がん患者の症状について正しいものを選べ。(2022-42)
- a. がん闘病中のがん患者の1/3の症例で痛みを経験している。
- b. がん患者のほとんどが治療経過中苦痛を感じずに過ごすことができている。
- c. がん患者の不安や抑うつは終末期に近づくほど減少する。
- d. がん患者が最も多く感じる症状は食欲低下である。
- e. 不眠が痛みを増長することはない。
- a. 患者の70%ほどが痛みを感じている
- b. 50%ほどが苦痛を感じている
- d. 倦怠感
- e. 増長する
64歳の女性。15年前に右乳がんで乳房全摘術を実施し、術後右腋窩と前胸部に放射線治療を受けた。前胸部皮膚転移、肺転移、脳転移を認め、1年前に抗がん剤治療は中止した。3日前から疼痛に対してオキシコドン徐放性製剤1日10mgの内服を開始した。昨日から悪心・嘔吐がある。以下のうち、悪心・嘔吐の原因として最も可能性が低いのはどれか、1つ選べ。(2021-36, 2022-36, 2023-36)
- a. 便秘
- b. オキシコドン
- c. 予期性悪心嘔吐
- d. 高カルシウム血症
- e. 脳転移による脳圧亢進
- c. 以前抗がん剤で嘔吐した記憶から抗がん剤に対する嫌悪感により起こる症状
66歳の女性。後頸部痛の増強と左上肢のしびれを主訴に来院した。
進行肺腺癌に対して外来で抗癌化学療法を施行している。以前から頸胸椎転移による後頸部痛があり、化学療法と併行してアセトアミノフェンとオキシコドンによる疼痛治療を受けていた。良好な疼痛緩和が得られていたが、2週間前に後頸部痛の増強と新たに左上肢のしびれが出現し、夜間の睡眠は痛みで中断するが、日中も眠っている。画像評価を行ったところ胸椎に新たな転移が出現している。
誤った対応はどれか(2022-40, 2023-40)
- a. 放射線治療科に緩和照射の相談をした
- b. 鎮痛補助薬を検討した
- c. 神経ブロックの適応がないかペインクリニックに相談した
- d. 疼痛緩和が得られるまで麻薬を増量した
- e. オピオイドスイッチングを検討した
- d. むやみに増量はしない
医療用麻薬について正しいものはどれか、1つ選べ。(2021-48, 2022-48)
- a. 麻薬過量の身体所見のひとつとして瞳孔散大がみられる。
- b. 塩酸モルヒネは腎障害の患者では慎重に投与しなければならない。
- c. 麻薬の副作用として、下痢がある。
- d. 麻薬がせん妄の原因になることはない。
- e. フェンタニルは呼吸苦にも効果がある。
- a. 過量=使用時縮瞳、離脱時縮瞳
- b. 腎不全時に蓄積するため
- c. 便秘
- d. ある
- e. 呼吸抑制がある
終末期がん患者に対する輸液療法の概念的枠組みとして誤っているものはどれか、1つ選べ。(2020-40, 2021-40)
- a. 家族の価値観に照らして全般的な治療の目標を明確にする
- b. 輸液による治療目標への影響を評価する
- c. 倫理的・法的妥当性
- d. 患者・家族と相談し、治療を実施する
- e. 治療によって生じる効果を定期的に評価し修正する
死が差し迫った時期の患者に対するケアの留意点として含まれないものはどれか、1つ選べ。(2020-41, 2021-41)
- a. 最期まで人格を持った1人の人として接する
- b. 使用中の薬剤量の調整や薬剤の変更を検討する
- c. 持続的鎮静を行っている患者への積極的な声かけをする
- d. 鎮静中は疼痛を感じないので苦痛表情に対して、第一に鎮静剤の増量を検討する
- e. 投薬やケアによってもたらされる苦痛が少ない方法を選択する
死が差し迫った時期の患者に対するケアの留意点として含まれないものはどれか(2022-41, 2023-41)
- a. 最期まで人格を持った1人の人として接する
- b. 使用中の薬剤量の調整や薬剤の変更を検討する
- c. 患者の苦痛が最小限となるように、できるだけ何もせずに見守る
- d. 患者が自分の苦痛や状況を正確に伝えるのが困難な時は、表情や姿勢などから評価する
- e. 投薬やケアによってもたらされる苦痛が少ない方法を選択する
終末期せん妄に対するケアの留意点について含まれないものはどれか、1つ選べ。(2020-42, 2021-42)
- a. せん妄の原因、経過、治療方法などを家族に適時・適切に説明する
- b. 今後の病状変化を予測し、患者の意識が混濁するまでに家族が患者との別れができるように調整する
- c. 家族の「安らかでいてほしい反面、眠ってほしくない」という、相反する気持ちに配慮する
- d. せん妄による「おかしな言動」には、否定や修正をせずに付き合う
- e. 終末期せん妄は回復困難であるため、患者の安全確保のため身体拘束を行う
アドバンス・ケア・プランニングについて正しいものはどれか、1つ選べ。(2020-45, 2021-45, 2022-45)
- a. 患者、家族、医療従事者の共同作業である
- b. 決定した事前指示を見直す必要はない
- c. 事前指示書を作ることが目的である
- d. 終末期と判断した時点で一度だけ行う
- e. 法的拘束力がある
専門的緩和ケアを提供する体制・施設として含まれないものはどれか、1つ選べ。(2020-46)
- a. 地域包括支援センター
- b. ホスピス・緩和ケア病棟
- c. 緩和ケアチーム
- d. 緩和ケア専門外来
- e. 在宅療養支援診療所
緩和ケアのチーム医療におけるメンバーの役割について誤っているのはどれか、1つ選べ。(2021-44, 2022-44, 2023-44)
- a. 医師は、他の職種からの情報も参考にして症状緩和を図る
- b. 看護師は、患者を全人的にとらえて療養生活を支える
- c. 薬剤師は患者には医薬品の説明、医師・看護師には適正使用のアドバイスをする
- d. 理学療法士は、ADLの改善が見込まれるときに介入する
- e. 医療ソーシャルワーカーは、社会的資源に関する情報を提供する
- d. ADLの改善と維持
終末期がん患者の在宅療養について正しいのはどれか、一つ選べ。(2021-46)
- a. 40歳以上であれば介護保険を利用できる。
- b. ホスピスから退院して在宅療養することはできない。
- c. 日本の在宅死亡率はおよそ50%である。
- d. 独居では在宅看取りはできない。
- e. 日本人の大多数は望んだ場所で最期を迎えることができている。
せん妄の診断について誤っているものはどれか、1つ選べ。(2020-49, 2021-49, 2022-49, 2023-49)
- a. 痛みなどの症状はせん妄を改善してから治療する
- b. 睡眠導入薬は直接因子となる
- c. 意識の障害を伴う
- d. 睡眠覚醒リズムの障害がある
- e. うつ病との鑑別を要する。
- a. せん妄の原因となっている痛みを取り除く
がん末期患者に対する苦痛緩和するための鎮静(セデーション)について誤っているものはどれか、1つ選べ。(2020-50)
- a. 鎮静の対象になりうる苦痛としてせん妄がある
- b. 多職種やご本人、ご家族と相談して導入する
- c. 鎮静がはじまるとご本人とのコミュニケーションは不可能になる
- d. 患者本人に鎮静の希望を問うことがある
- e. 苦痛が治療抵抗性かどうか判断できない時は期間を限定して行う
- c. 患者と対話しながら行う調節型鎮静もある。持続的鎮静ではコミュニケーションが不可能となる。
緩和ケアについて正しいものはどれか。1つ選べ。(2022-46)
- a. 終末期患者の多くはかかりつけの病棟で最後を迎えたいと思っている
- b. 終末期患者の約半数は緩和ケア病棟かホスピスで最期を迎えることができている
- c. 早期からの緩和ケアが生存期間を延長するという報告がある
- d. 緩和ケアは病気そのものにのみ介入する
- e. 緩和ケアは診断時期から介入する必要はない
- a. 緩和ケア病棟で最期を迎えたい
- b. 実際は8割が病院で死亡
- d. あらゆる苦痛などに関与
- e. 早期から介入
85歳の女性。肝門部胆管癌により残り数ヶ月の余命と告知されている。本人の希望により、在宅での診療を行なっている。ある日、在宅医が訪ねると、「病院に入院したい」と言っている。在宅医のとるべき対応として、適切でないものはどれか。1つ選べ。(2022-47)
- a. 入院という選択はありません
- b. 自宅にはいたくないのですね
- c. ご家族の気持ちも聞いてみませんか
- d. 訪問看護師とも相談してみましょう
- e. 何かお困りのことがあれば教えてください
悲嘆(Grief)について正しいものはどれか、1つ選べ。(2020-43, 2021-43)
- a. 喪失に対するさまざまな心理的・身体的症状を含む、情動的(感情的)反応
- b. 所有していたものや、愛着を抱いていたものを奪われる、あるいは手放すこと
- c. 死によって大切な人を亡くすという経験をした個人の客観的状況
- d. 予期悲嘆を経験すれば、死別後の悲嘆が軽減される
- e. 複雑性悲嘆は6カ月ほど経過すれば自然に消失する
- b. 喪失のことである
- c. 死別のことである
- d. よく誤解されるがこれは間違いである
- e. 複雑性悲嘆は6か月以上症状が継続しているという定義である
悲嘆(Grief)について正しいのはどれか(2022-43, 2023-43)
- a. 喪失に対する様々な心理的・身体的症状を含む、情動的感情で、誰でも経験しうるものではない
- b. 所有していたものや、愛着を抱いていたものを奪われる、あるいは手放すこと
- c. 患者の死によって悲嘆するのは患者の家族だけである
- d. 予期悲嘆を経験しても死別後の悲嘆は軽減される
- e. 複雑性悲嘆は6ヶ月ほど経過しても強く情動反応が継続している
- a. 誰でも経験しうる
- b. 喪失のことである
- c. 友人や知人もである
- d. 軽減されない